入院中だけでなく退院後もケアを必要とする患者は数多く存在します。コロナ禍で制限が増え、患者の孤立化も進みました。医療現場は慢性的な人員不足のため、医療従事者はワークライフバランスの調整もままなりません。そこで「オンラインで患者を支えることができないか?」と生まれたのが、SNSを活用したがん患者向けの対話サービス「Tomopiia」です。患者だけでなくナースのニーズからも着想を得た、新しいコミュニケーションの形が生まれています。
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患者にもっとも近い医療従事者とも言えるナースにとって、患者自身の生きる力やQOLを高めることは重要な目標の一つです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大などによって病床が逼迫し忙しさが増す医療現場では、患者をいかに早く治療して退院させるかがより求められるようになりました。目の前の業務に追われ、一人ひとりの患者の心に寄り添う時間やゆとりを持つどころか、自らのワークライフバランスを整えることすらも難しくなり、現場を離れるナースが増えています。
そこで、「いつでもどこでも患者とナースが対話できるプラットフォーム」の構築に着目したベンチャービジネスが「Tomopiia」です。SNSを使うことで解決できる課題は多くあります。患者は距離や時間の制約を受けずにナースへ相談ができるようになり、気持ちを文字にすることで自分の想いや不安を整理できるようになりました。主治医、家族、友達にさえ言えないような話でも、ナースに打ち明けることで気持ちが落ち着くことがあり、ナースとのやりとりそのものが患者にとって支えとなっています。
また、ナースにとっては「自宅でできる看護」が、自身のワークライフバランスを保つための一つの解決策になりえます。医療現場を離れた後も、経験を生かして患者を支える機会を持つことができるようになるほか、テキストだけで行うコミュニケーションの難しさを経験することで、普段何気なく行っている患者との接し方を見直すきっかけにもなると言います。
Tomopiiaがサービスを提供し始めた当初は、コミュニケーションによって患者の自立をサポートし、QOLを上げることを重視していました。しかし、結果的に患者との会話を弾ませ、サービスのエンゲージメントを高めたのは、患者をサポートするための目的をもった問いかけではなく、患者とナースがフラットな関係で重ねる「対話」でした。
Tomopiiaの重村代表はこう話します。
「対話を終えた患者さんから、『自分から話すことで自分の本当の想いに気付けました』とコメントをいただいたときに、“患者から聞かなければいけないことを聞く”のではなく、“患者が聴いてほしいことを聴く”ことが大切だと気付きました。また、ほどよい距離感で話を聞いてくれる人がナースであることに、大きな意味がありました」
結果的に、Tomopiiaが目指すコミュニケーションの形は「患者の気持ちに言葉で寄り添うこと」を重視したものへと変化していきました。
Tomopiiaが目指すのは、「患者を支えるプラットフォーム」を創ることによって、医療現場だけでは充足できない、患者一人ひとりが大切にされると実感できるような場を創り、すべての患者が自分らしい生き方を選択できる世界をつくることです。また、患者を支えるナース自身が、自分らしく、より幅広いフィールドで活躍できる環境を整えたいという願いもあります。
看護の現場を離れる非就労ナース(一時休業・看護以外への転職・リタイアなど)はおよそ70万人いると言われています。Tomopiiaのサービスが普及すれば、看護の幅を広げることに繋がり、患者とナースが「対話」する機会をこれまで以上に増やすことができます。
今後については、ナースのサポートを得て地域医療の改善や医療全体の効率化を目指し、さまざまな地域の自治体や企業、病院などと連携していく予定。重村代表は、「患者の心理的ケアとナースが活躍できる場の拡大、そのどちらにも貢献したい」とその展望について話しました。
2022年12月には、「これからの看護の可能性」と題したシンポジウムを開催。最新情報はTomopiiaの公式ウェブサイトや、Moon Stories Blogで随時お知らせしていきます。
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