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やるべきだと胸をはって言える強さ スタートアップへの挑戦から得た学び|Moon Alumni Interview

2023/03/23

三井物産からMoon Creative Labへ出向し社内起業を経験したのち、三井物産に戻って活躍されている方々にお話を聞くインタビュー。今回は、暗号資産ジパングコインの発行事業に注力する辰巳喜宣(たつみ・よしのり)さんにお話を聞きました。Moonでのスタートアップ体験で学んだこととは?

 

目次

  1. やるべきだと胸をはって言える強さ
  2. 自分がターゲットユーザーになればいい
  3. 外注せずに自分で実行するメリット

1.やるべきだと胸をはって言える強さ

三井物産コーポレートディベロップメント本部​​・商品市場部に​​所属する辰巳さんは、2018年に社内の新規事業アイデア募集へ投資案件を応募したことがきっかけとなり、同年10月からMoonで起業に挑戦することになりました。

当初は投資案件としてスタートしたプロジェクトですが、協業を目標にした事業開発にシフト。検討したのは、インバウンド観光客をターゲットにした、移動と地方創生に着目したサービスでした。「1 Hour Trip」と名付けたこのアイデアは、目的地までの最短ルートではなく、おすすめの移動ルートを紹介することでユーザーの移動時間を充実させようというもの。

バス、電車などといった交通機関の乗り換え検索を統合したプラットフォームを開発し、徒歩も含めたルートの提案に、飲食店、ツアー、さまざまな体験など、サービス情報を連携させることを目指しました。交通機関のリソース分散や、観光客が住宅地へ進出することを防ぐことなど、サービス関係者へのメリットもありました。

しかし、技術的な問題や、アライアンスにかかる時間など、さまざまな課題が立ちはだかったことから、事業アイデアはピボットを繰り返すこととなりました。なかでも印象に残っているのは、自分とは生活環境や文化背景が違うターゲットユーザーの課題やニーズを想像することの難しさだったと言います。

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辰巳さん「想定ユーザーだったインバウンド観光客は、日本に住む自分とは違う存在でした。ニーズを深く知るためにはインタビューが必要でしたが、インタビューを繰り返してユーザーニーズを想像すればするほど、自分にとってなにが大事なのかを見失っていくようにも思えました。さまざまな理由でプロトタイプの開発判断も出ず、ピボットを繰り返したことも影響し、このビジネスをやるべきなんだと胸をはって言い切ることができない状態になっていきました」

 

 

自信のなさは、コミッティへの提案やプロジェクトメンバーとの業務にも大きな影響を与えます。辰巳さんはプロジェクトの終盤になって、納得のいくビジネスの可能性を見出しましたが、そのときには十分なリサーチを行う時間は残されておらず、マネタイズの仕組みづくりなどが間に合わないまま開発判断は見送りに。2020年12月にMoonを卒業することとなりました。

2.自らがターゲットユーザーになればいい

三井物産へ戻った直後から、辰巳さんは暗号資産ジパングコインの立ち上げに参加することになりました。ジパングコインは金価格との連動を目指す暗号資産で、長期的には金現物との交換機能や決済での活用が想定されています。

Moonでの経験から、ターゲットユーザーを深く理解することの重要性を学んだ辰巳さんは、当時の考えをこう話します。

 

辰巳さん「自分自身がターゲットユーザーになることがとても重要だと感じました。Moonでほかのベンチャーを見ていたときも、起業家自身がターゲットユーザーであるビジネスアイデアはマーケットの大きさに関わらずいろいろなものを引き寄せる力強さがありました。とくにマーケティングでは有利に働くと感じます。だから、自分がもともとターゲットユーザーでなかったとしても、そうなればいいと思いました」

 

辰巳さんはその後「experiment fast」「strech our comfort zone」といったMoonのバリューを三井物産で次々と体現していきます。

 

辰巳さん「ジパングコインのプロジェクトに参加した瞬間に、全資産をすべて暗号資産に変え、自分で取引をはじめました。ユーザーは投資家ですから、自らが投資家になる必要がありました。身銭を切って初めて深く理解できることがあります。だからこそ、だれよりも商品の価値と弱みを知っているし、市場からどのように見られているかを理解していると自負しています。投資家がジパングコインの話を聞いたときには私の顔が思い浮かぶ程度に業界から認知されていると思いますが、それはMoonでの経験がきっかけになって行動をした結果だと考えています」

 

辰巳さんは、ジパングコインの事業開始に伴い、ウェブサイトやSNSアカウントを自身で作成・運用し、日本ブロックチェーン協会が開催した2022年度の「今年、国内のブロックチェーン界隈で一番活躍した/話題になった人物(Person of the Year )」にノミネートされています。しかし、辰巳さんにとってSNSの運用やコンテンツマーケティングは、Moonにいたときにもほとんど経験したことがない業務だったと言います。

3.外注せずに自分で実行するメリット

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辰巳さん「Moonで一緒に仕事をしたエキスパートたちから学んだことは、外注せずに自分で行動することの大切さでした。自分でできればより柔軟で素早く対応できるほか、お金もかからず稟議も要りません。ノーコードのツールでウェブサイトもつくれますし、SNSはだれでもすぐに始められます。とにかく早く世に出して反応をみた方が良いと考えています」

 

ジパングコインの立ち上げに取り組む辰巳さんにとって、ウェブサイトやSNSの活用はお金をかけず、すぐに市場の反応を見れる打ち手の一つでした。Moon在籍時はリサーチを中心に行っていたため、まだプロダクトがなく、できることも限られていましたが、今では自らの手を動かすことの価値をより強く感じるようになったと言います。

 

辰巳さん「どちらかというとSNSとは距離を置いて生きてきたので、とくに投資家コミュニティにおけるSNSの重要性を改めて知りました。私ひとりの拡散力はたかが知れていますが、同じコミュニティに深く入り人々とつながることで、数多くの万単位のフォロワーがいるアカウントもサポートしてくれています。投資の判断材料において、プレスリリースよりも第三者の意見の方が大きなインパクトが生む場合もあります。信頼できる個人の繋がりはとても大事です」

 

最後に辰巳さんは、Moonに在籍していた当時の経験と、三井物産に戻ってから今までを振り返り、こう話します。

 

辰巳さん「Moonには、それまで私が出会ったことのなかった、さまざまなバックグラウンドを持つ人がいました。この出会いがなければ、自分の世界を広げるきっかけは得られなかったように思えます。私がMoonで学んだことを、仕事を通じて三井物産に伝えることで、結果的にMoonのバリューが三井物産にも広まれば理想的です」

 

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