プロジェクト管理において言語がいかに重要な役割を果たすのか、そして、多様な言語に配慮した空間づくりの重要性とは?Moon Creative Labのシニアデザインリード、マテウス・レゼンデが執筆。
私はこれまで、特定の事業部門が立ち上げたプロジェクトに参加したことはなく、異なる部署間やステークホルダー、プロジェクトパートナーが関わるような複雑なシステムの集約を目指してきました。しかし、三井物産本社のモビリティビジネスチーム内で生まれたプロジェクト「Agritech」での最近の経験で、考え方が変わりました。
このプロジェクトがワークショップを経てMoonへとやってきたとき、そこにはロジスティクス、DX、機械、食品事業部のプロフェッショナルが参加していました。加えて、日本とブラジルそれぞれの三井物産から参加したメンバーもいました。プロジェクトは、グローバルコネクティビティとスマートセンシングのソリューションを、惑星規模で開発しているパートナー企業の開発チームとコラボレーションする、ユニークなビジネスチャンスでした。
Moonとしての最初の課題は、この多様性に満ちたチーム間の会話を円滑化すること、そして、三井物産が南米で活動している地域のプロセスの質を向上させながら、パートナーの開発した技術をブラジルのビジネスで応用するにはどうすればいいか、その可能性を模索することでした。
Moonはパロアルトに本社を構え、チームや組織の大部分が英語ベースで仕事をしているため、ワークショップを開催したり、異なるバックグラウンドを持つチームとプロジェクトに取り組む際には、主に英語が使用されます。三井物産は世界60か国以上で事業を展開しているため、これも一般的なことですが、私にとっては特別刺激的なプロジェクトでした。
そう思えた理由は、私にとって人生の大部分を過ごしたブラジルをターゲットにしたプロダクトを扱えるからだけでなく、私がポルトガル語、英語、日本語の3か国語に堪能なプロフェッショナル集団の中に身を置くことができたからでした。最初は、プロジェクトを率いる自分は有利だろうと考え、ワクワクしていたのですが、後になって、プロジェクトを効率的に管理し、ビジネスを成功させるために、言語がいかに重要な役割を果たすかを思い知らされました。この気付きは、それを考慮したスペース、フレームワーク、プロセスの作り方を学ぶことにつながりました。
英語は便利でグローバルな共通言語であることはもちろんですが、同時に覇権主義的な力を持っていることも忘れてはいけません。私が得た重要な学びは、言葉の壁が創造性を覆い隠してしまうかもしれないということでした。素晴らしい洞察力を持つ多くのプロフェッショナルが、不十分だと感じられるかもしれない英語での発言を恐れ、一歩引いてしまう可能性があるのです。
これは、私が以前携わっていた語学学習アプリ「GORIL(ゴリル)」のユーザーインタビューの際に日本のプロフェッショナルたちがよく語っていた言葉でした。流暢でない言語でコミュニケーションを取らなければならない場合、自分の意見を主張したり、提案したりすることに悪影響が出るかもしれません。言い換えれば、レトリックがその潜在能力を十分に発揮できない可能性があるということです。
ミスコミュニケーションは話をきちんと聞けていたとしても起こりえます。100%流暢でない言語で口頭により情報が伝えられると、その解釈が難しくなり、反応や応答ができない可能性があるのです。例を挙げればきりがありません。
そこで、プロジェクト作業環境で2つ以上の言語が使われている場合に、コミュニケーション効率を向上させるための重要な学習戦術をいくつか紹介したいと思います。
プロジェクトに関係する言語に流暢に対応できる人材をチームに配置すること。この人材は、翻訳に迷う瞬間を明確にするために介入することができ、さらに、それぞれの言語に対する文化的洞察力を持つため、紛争処理に役立ちます。
使用言語が英語であろうと他の言語であろうと、他のチームメンバーがその言語に対して100%流暢でない場合は、単語と単語を区切ってゆっくりと話すようにすること。多種多様な表現、比喩的な表現、複雑すぎる語彙を持ち込まないようにしましょう。
ファシリテーターだけでなく、他のチームメンバーも皆の反応をチェックし、複雑すぎて解釈できないような会話や発言、質問を補足する役割を持つべきでしょう。使用されている言語で十分に伝えられない人のために文章を言い換え、ギャップを埋める手助けをすることもできます。たとえ同じ言語を話していたとしても、言い換えることは時々あるのですから。
複数言語を話せるチームをつくりましょう。バイリンガルやトリリンガルのメンバーが多ければ多いほど、会話や成果はよりパワフルなものになります。また、メンバーの中に特定の言語を話せない人がいる場合は、たとえ流暢に話せなくても、日常生活で使えなくても、その言語を学ぶことをサポートしましょう。同僚やビジネスパートナーと言語でつながることは、共感を高めるために重要な役割を担っています。
私たちのパートナーである三井物産や多くのブラジル人ステークホルダーが関わるプロジェクトは、3つの言語の中で進行しています。もちろん、物事がより複雑になることもありますが、私たちが絶対に避けたいのは、言語能力による批判やチームメンバーの優越感による振る舞いです。
そして、なによりも重要なのは、3つ言語が使われているとして、それがどの言語から発信された情報であれ、すべての情報の文脈がすべてのメンバーに簡単に翻訳されるように、全員が常に同じ理解を得られるように、よく確認をすることでしょう。
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